「リスボンに誘われて」 偶然から始まる必然 

「リスボンに誘われて」 (2013) ドイツ=スイス=ポルトガル
原題/Night Train to Lisbon
監督/ビレ・アウグスト
出演/ジェレミー・アイアンズ メラニー・ロラン ジャック・ヒューストン マルティナ・ゲデック 他

リスボンに誘われて

スイスのベルンで古典を教える高校教師ライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)は、5年前に離婚してから孤独な一人暮らしを送っていた。
ある寒い雨の朝、通勤途中の吊り橋の上で偶然飛び降り自殺をしようとする女に出くわし助けるが、彼女は赤いコートを残し居なくなってしまう。
彼女の残したコートの中にはポルトガル語の一冊の古本が残されていた。
美しく情熱に満ちた文章に魅せられるライムント。
本の中に入っていたリスボン行きのチケットを便りに女を探して訪れた駅で、ライムントは衝動的にリスボン行きの夜行列車に飛び乗ってしまうのだった。


リスボンに誘われて
嵐の朝 吊り橋の上から飛び降り自殺をしようとする女を助けるライムント


リスボンに誘われてリスボンに誘われて
居なくなってしまった女の残したコートの中には一冊の古本   その著者のアマデウ・デ・プラド


パスカル・メルシエのベストセラー「リスボンへの夜行列車」を「ペレ」「愛の風景」のビレ・アウグストが監督。
名も無き作家が遺したこの世に100冊しか存在しない本に出会った男が著者に会うために退屈な生活を捨て衝動的に旅立つという物語。
髪切った帰りに三宮ブラッとしてて、「あ、これ初日かぁ」と衝動的に観てきました。
いやぁ~しっとりとした素敵な映画でござった♡

ジェレミー・アイアンズ演じるライムントは、妻と離婚し刺激のない淋しい日々を過ごす古典を教える教師。
生活に華は無く、独りでチェス盤に向かい見えない対戦相手と語らい、切らしているため出がらしのティーバックで紅茶を飲むような温かみのない生活。
冷たい雨の降る色味の無いスイスの空模様は彼の心の中そのもの。
ある朝通勤途中で飛び降り自殺をする女を助けたことで彼の退屈な毎日が大きく変わることになります。
女の残したポルトガル語で書かれた古書の文章に魅せられたライムントは、学校の授業を放り出し一路リスボンへ旅立つこととなります。


リスボンに誘われて
リスボン行きチケットを頼りに女を探しに駅に来たライムントは列車に飛び乗ってしまう。


物語はアマデウに関連する人々を追い求めるライムントの現在の話と、アマデウに関わった人々が語る過去の話が交互に描かれる形で勧められます。
実は医者であったアマデウは若くして亡くなっているのですが、独裁政権下においての特権階級の息子でありながらレジスタンス活動に身を挺していた事がわかります。
当時のレジスタンス活動など緊迫した状況が描かれているのに、語り口はとても静かな印象をうけました。
関わった人々の中で激動だった過去の出来事がある意味昇華される程の年月が経っているからなのかしら。
アマデウの思い出を語ることにより、ある人は怒りを思いだし、またある人は愛を思いだし、そして悲しみを思い出として向き合うように変化していきます。
何十年も経って一人の男が一冊の本を携えて、彼らの辛い過去を揺り動かしに来るのですが、過ぎた年月も手伝いそれら痛みが彼らの中で優しく浄化されているのが分かるんですよね。
その過程が静かに、でもしっかりと描かれいて胸に響きました。


リスボンに誘われて
出会った人々から、少しずつアマデウの生涯が見えていく・・・


アマデウの過去が少しずつ明らかになる中、情熱や刺激を無くしていたライムントも少しずつ人として再生していきます。
思えばこの物語、ライムントの本との出会い以降全てが”偶然”の繰り返しにより進んでいます。
自殺する女を助け、本と出会い、メガネを壊し、その偶然に付随して出会う人から導かれるようにアマデウの生涯に近づいていくライムント。
生きる情熱を失っていたライムントが最後にはもう一度新たな人生を歩もうとするラスト、彼の選択がより良いものであれと願わずにはいられません。


リスボンに誘われて
痩せても(もともと痩身な方ですが)枯れてもジェレミーはジェレミーだぁな。

物語を支える演者たちの演技が素晴らしい本作。
まずは主演のジェレミー・アイアンズ。
枯れたな~、しかしこの渋さ! す、ステキ・・・♡
壊した重いメガネを新しくするライムント。軽いメガネに慣れていくことが心の澱を脱いでいく心象の変化だとわかります。
彼の演技が素晴らしいのは勿論、アウグスト監督の細やかな演出が光ります。


リスボンに誘われて
皺!! しかし溢れる魅力!! こんな風に歳を重ねたいものですがぁぁ・・・

アマデウを慕うブラコン気味な年老いた妹アドリアーナにシャーロット・ランプリング。
彼女の兄への愛情はもしかしたら肉親以上のものなのでは?
この女優さんは皺さえも美しく、その存在感はさすがです。


リスボンに誘われて

アマデウとレジスタンス活動を共にし愛し合うエステファニアにメラニー・ロラン。
みーすけは彼女の美しくも意志の強さの溢れる顔が大好物。
ああ~~、こんな顔に生まれたら人生変わっただろうな~ええ、所詮夢です夢。
若きエステファニアはある決断をするのですが、それにええ~?どおしてぇぇぇ?と泣きそうになりました。


リスボンに誘われて

で、エステファニアが年取ったらレナ・オリンになるのか?!しょえええ~~~。
わたしの中でレナ姐さんって、「蜘蛛女」の超ビッチや「ナインスゲート」のフェロモン全開の悪女ってイメージが強いですが、やはり貫禄の大女優。
声を張らずともセリフがいちいちこちらの胸に深く刺さる演技は秀逸。
出番は少ないながらとても印象的でした。


リスボンに誘われて

アマデウの学生時代からの親友ジョルジェの後年を演じるのが大好き役者ブルーノ・ガンツ。
かつてのベルリンの天使もおじいちゃまになりましたね。
過去の激情や愛、哀しみを昇華して、アマデウへの友情だけを胸に薬局を営むジョルジェとライムントのワインな夜の語らいは優しくいい場面だったわぁ♡


リスボンに誘われて

メガネを新調する事で出会うマリアナにマルティナ・ゲデック。
そう、「マーサの幸せレシピ」の彼女です。ハリウッドもリメイクしてるけどわたしは断然オリジナルが好き!
ほんのりとした二人の恋の予感は観ていて心が和みました。
「わたしを退屈でないと言ってくれてありがとう」というライムントのセリフにきゅううぅぅんです♡


ブロ友pu-koさんのレビューで、ポルトガルの独裁政権下の予備知識があったほうがいいって書いてたのを思い出して、鑑賞直前にウィキっていたのが功をそうしました。
ちょこっと知ってるだけで、スムーズに映画の世界に入れますので、観る方はちょっと事前情報を入れておいてほうがいいですよ。
偶然の出会いはあちこちに落ちています。それが人との出会いであっても、本や仕事や映画やといった物事であっても。
その偶然の出会いを、振り返れば必然であったかもと思えるようにするのは、自分の気持ち次第なのではと考えさせられました。
しっとりとした余韻のあるラストも秀逸。リスボンの石畳の風景や美しいスペインの海。
そしてバックに流れる音楽もステキ。 
枯れかけていた男が、劇的に生きた男の人生を辿ることで、自らも再生していく暖かな物語。
これお勧めです。

・・・・・・と、いつになくチャラける事なくしっとりと終わろうと思ってたんだけどね。
やっぱ、ちょっと萌えな話させて~~~!!



リスボンに誘われて
おいおいおい~~~、 ふ、ふつくしい・・・・♡

まず、彼!登場人物達に大きな影響を与えた今は亡きアマデウ・デ・プラドを演じていたジャック・ヒューストン!
全くのノーマークだったこのイギリス人役者。
だれ?知らん!いい男!この目周りの濃さ好みだわぁ。
ん?ヒューストン? え?ヒューストンとな???
そう、なんとこの彼、名匠ジョン・ヒューストン監督のお孫さん!
てことは、アンジェリカ・ヒューストンの甥かよ!サラブレッドかよ!
「アメリカン・ハッスル」にも出てたらしい、全く記憶に無いけどさ。
ちょっと今後の活動要チェックだぜ。


そして・・・・
あんまり事前情報入れずに観た事による嬉しい驚きがぁぁ。

こ、こ、この役者わ!!! ↓ ↓ ↓

リスボンに誘われて

出たぁぁぁぁぁ!!!
ナイトの爵位を持つ男! その出演作は270本超え!生きる映画の伝説!
クリストファー・リーです♡
このパート誰得?
俺得です!
出てきた途端にびっくりしてうめき声出ちゃったもんね。最前列一人で座ってて良かった。
家でのDVD鑑賞だったら、生き神様!と拝んでたかもしれんぞ。

以前にもどっかで書いたけど実はこの人、わたしの初恋の人なんですぅぅぅ♡
幼稚園に行くか行かないかの幼児が、彼の「吸血鬼ドラキュラ」を観て恋心(多分)を持ったとは。
思えばみーすけの面長好き、イギリス方面役者好き、ホラー好きの起源は彼あっての事なのかも。
正に三つ子の魂百まで。
大体この人1922年生まれだから、今年92歳ですよ!
しかも未だ役者として現役って。
さすがに映画の中でも杖をついていらっしゃいましたが、低く響く舞台仕込みの素敵なお声は健在。
シェークスピア舞台で培われた美しいキングス・イングリッシュに萌え萌えでスクリーンにカブリつきでした。
も、この映画、クリストファー・リーの演技を観れただけでも満足ですぅぅ♡。
本当にお元気で活動されてて嬉しい・・・。
ドラキュラ伯爵は不死なのです。

リスボンに誘われて
よ! どもども。 わたくし美女の生き血吸って現役バリバリだぜ!

本作のプレミア会場でのクリストファー・リー氏
こうなったら100歳超えで役者やっちゃってください!!!♡♡


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最近メッキリ映画から離れた感のある私、、でもこれは観たかったの。雰囲気ある映画好き。しかしシャーロットさん、、メイクだよね?本当にここまで今老けてるのかな?美女でしっかりした視線が好きだけど、、ちょっとショックです。来月までやってたらwikiてから観に行くー。

Re:

め ちゃん

先に観ちゃった、すまんすまん。
アマデウの人生は激動なんだけど、語り口がしっとりと落ち着いていて不思議な静寂感さえ感じたな。
役者たちの演技がそれぞれ素晴らしくて。
シャーロットさん、老けメイクしてるのかな。
化粧っけのない素顔は老いが滲み出ていたけど、やはり彼女独特の気品があって素敵だったよ。
来月かぁ。昨日から上映だからギリ最初の週までならセーフかな?
wikiってから是非~。

No title

わーい、これ私も好きでした。
そうそう、突飛な行動で激動の時代を描いているはずなのにしっとり。
時が癒すもののあるという穏やかな空気もいいよね。


で、えーーリー様もう92歳?
それでまだしっかり演じられるところがスーパーだわぁ。
みーすけさんのイギリス好きの始まりでもあったのかぁ。
ジャック・ヒューストンにもチェック入りましたね。
確かに男前。でも私は何故か記憶に残らなくてね。
『キル・ユア・ダーリン』でも観てるはずなのにあまり印象に残ってないのだかわ。
TBさせてもらいますね。

Re: No title

pu-koさん

緩やかに段々と過去の物語が明らかになっていく演出が良かったー。
歳を重ねて人々がどう過去に折り合いを着けたのか、その過程を想像するのも面白いかも。

リーさんは生きる伝説だよね。ギネスにも登録されてるらしい。生きること=演じること。未だ需要があるのも凄い。

ジャック・ヒューストン、「キル~」にも出てるの?
最初スチュアート・タウンゼント?って思った。目元が色んな俳優に似てるのかも。
まだ出演作も少ないし、これからどう化けるのかお手並み拝見ってところだね。
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天邪鬼なので映画の好みも多少偏りありです
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