『アリスのままで』 アリスでなくなっても残るもの

『アリスのままで』 (2014)アメリカ
原題/Still Alice
監督/リチャード・グラツァー
出演/ジュリアン・ムーア アレック・ボールドウィン  クリステン・スチュワート 他







大学で言語学を教えるアリス(ジュリアン・ムーア)は、ある日学内をマラソン中に自分が何処にいるのか分からなくなってしまう。
簡単な言葉が出てこなかったり、記憶力に違和感を感じたアリスは、病院で検査を受ける。
出された診断は「若年性アルツハイマー病」だった・・・。



家庭にも仕事にも恵まれて日々を過ごすアリスに突然の発病・・・


Still Alice
記憶どころか判断力も無くなってしまう恐怖



「自分」であり続けるためのアリスの日々


『マッド・マックス/怒りのデス・ロード』で アゲアゲーー↑↑ ぐわわー!!
・・・っとなった同じ週末に、これも観てたという。
気分の上がり下がり激しい週末であったよ。
ジュリアン・ムーアが本作の演技でアカデミー主演女優賞をゲット。
監督のリチャード・グラツァーはALSを患い、オスカーの結果を待たずに亡くなっています。


大学で言語学を教えるアリスは、50歳の誕生日を迎え家族と仕事に恵まれ充実した日々を過ごしています。
しかしある日授業中に簡単な単語が思い出せなくなる。
続いて学内をジョギングしていて、突然自分が何処にいるのか全く分からなくなり軽いパニックを起こしてしまいます。



ここはどこ?状態 怖いよねきっと


自分で明らかにおかしいと感じるレベルの異常に、混乱しながらも病院で検査を受けるアリス。
検査結果は「若年性アルツハイマー病」というあまりにも重い現実。
病名を受け止めるまでの葛藤。
まさか自分が? なんで自分が?
混乱と恐怖、色々なもので感情を爆発させて泣きわめくアリスにこちらも一緒に怖くなった。
病気や不幸は本当にある日突然目の前に現れるんですよね。



料理の合間に単語ゲームをして脳の活性を促すアリス


重い病名を受け止め、何とか自分らしく生きようと努力するアリス。
そう、彼女は闘います。
簡単な約束や物事を覚えていられない自分にいらだち、それでも日々小さな努力を積み重ねる。
以前から遊びでやっていた長女とスマホで単語ゲーム。
日々の予定を登録してアラームをセットする。
ボードに単語を書き込み、時間をおいてその単語を思い出す。
自分の記憶を、脳を何とか自分でコントロールしようと頑張るのですが無情にも病気の進行は止まってくれない。
病気はアリスから仕事も日常生活も奪っていってしまう。
切ない。


Still Alice
アリスの努力も空しく 日々進む症状


ホントに切なかったのはね、彼女の発病した「若年性アルツハイマー病」が遺伝性のものだという結果。
遺伝率は50% 発病率が100%!100%って!!
娘二人と息子一人を持つアリスにとって一番応えたのはこれなんでしょうね。
わたしには子供がいないけれど、例えば両親から絶対発病してしまう重い病気を”受け継がされた”事実を聞かされたら・・・。
もの凄く腹が立つし悲しいだろうけど、怒りの矛先が両親でないのは分かる。でもきっと悲しくて腹が立つ。
病気を受け継いだ娘にアリスはただひたすら謝ります。
彼女も自分の親から遺伝として受け継いでしまっているだけなのに。
でも知らないとは言え愛する子供に病気を渡してしまったという事実にアリスは苦しみます。
謝るしかできないアリスに胸がつぶれそうになって、これ辛かったなー。


Still Alice
娘が病気の遺伝子を受け継いだと聞かされて・・・


重い題材、内容も痛々しい。
けれど、映画としては大きな波や、ドラマティックな演出をわざと外している印象を受けました。
発病したアリスを淡々と見つめる映画、とでも言いましょうか。
大げさな音楽で盛り上げたり、劇的な事件が起こったりしない。
ところが、それが却って病気や、それに対するアリスの対応、家族の介護といったものにリアルを感じさせられました。
でもじわじわ浸みる山場もちゃんとあります。
同じ病気の患者たちが参加するセミナーでスピーチをするアリスの言葉。
「わたしは闘っています。」
日々自分であり続ける為に闘うアリスをカメラは追います。

症状が進む前にアリスがパソコンのフォルダーに自分宛てにあるメッセージを残します。
それを病状の進んだアリスが偶然見つけて見てしまう。
ぶっちゃけ自殺を促すような誘導メッセージなんですよ。
このメッセージ、アリスの気持ちが分かる! でもそれはNGだろうという気持ち。
二つの気持ちが入り混じってかなり複雑でした。
痴呆という病気によって自分が将来”なる姿”を介護施設で見た時のショックは大変なものでしょう。
「癌だったらよかったのに!」と叫んでしまうアリス。病気に優劣なんてない。
でも、思わずそう言ってしまった アリスの人として社会人としてのプライドは痛いほど分かる。
でも・・・と、何だかモヤモヤとした気持ちが溢れてしまった。


Still Alice
亡くなった家族の柔らかな思い出が残る海岸で過ごす穏やかな日


てゆーか、ここからはわたしの戯言ね。
モヤモヤっとしたまま帰宅したら、途中からだったけど『ゼロ・グラヴィティ』やってたんですよ。
宇宙で独りになったライアンが途中自ら命を絶とうとするシーンがあるでしょう?
彼女はたった一人の娘を亡くして、地球にはもう未練が無いという設定。
でも、結局ライアンは「ジョージ兄貴の幻影」という形に変えた生きることへの渇望に縋り付いて、生還しようとあがきもがく。
題材もテーマも違うけれど、わたしって自分がヘタレな分「生きよう」と綺麗事でも偽善でも直接訴えてくる映画に痺れるんだなって思いました。
あ、でもこの作品が病気を悲観するネガティブメッセージを発してるとは思いません。
色んなことを考えるきかっけのスイッチを押させる映画かなと思います。
アリスは本当に自分であるために精一杯闘っていましたから。
正直彼女は病気には勝てない。
でも病気との闘いに負けたとしても、最後に彼女と家族の元に残る物がちゃんとあるという事を映画は語っています。
それは 彼女が最後に発する言葉 かなと・・・。
あ、ダメ、 泣けてきたぁ・・・。


Still Alice
原稿をマーカーで消し込み重読しないようにスピーチするアリス 『闘う』という言葉が力強い


ジュリアン・ムーアの演技は間違い無し。
静かに病状が進む過程を大げさでないのにちょっとした仕草や表情でそれと分かるように演じていて、さすが。
じわじわ変わって行くし、見た目が大きく変わらないので気づきにくいのだけれど、彼女の眼の輝きや口元の表情で病気の進行が分かるという細やかな演技。
病人演じたらオスカー取れるのかよって意地悪な意見もあるけど、彼女の受賞はちょっと遅すぎって感じがしないでもないしね。
納得の主演女優賞ではないでしょうか。


Still Alice
今回可愛いお尻は出しませーーん

末っ子で大学もいかずニューヨークで売れない役者をしてるリディアをクリステン・スチュワートが演じていい味出してた。
彼女ってホント、蓮っ葉というか、ちょっと問題のある少女を演じさせたらどハマりだよね。
ちょっと破天荒、でもアリスの事を大切に思ってるのは手に取るようにわかる。
母親の病気を経験して精神的に大人になるんですね。


Still Alice
介護の為に戻ってくるリディア  彼女の読み聞かせが心に響いたー(泣)


うーむむ・・・こういう題材の映画は感動するけど、観るのが非常に辛いス。
鑑賞後も凹む気持ちに追い打ちをかけるようにマイナス思考が頭を巡るのでレビューも暗くなりがちで。
いつものおふざけなおバカブログと同一人物と思えないような真面目な文章になっちゃったりなんかして。
みーすけ色を出そうか悩んだのですがぁ。
出しましょう みーすけ色! あ、いや、無理に出さなくてもいーんだけど。
でもホントに凹んで辛かったので、ちょっと軽くしときたい。



「出番よアレック」  「ん?出番?」


ちょうど1年前、ウディ・アレンの『ブルー・ジャスミン』でジャスミンのバカ野郎な夫を演じていたアレック。
正直今回も理解不足なバカ夫かぁ?と非常に危惧してたんだよね。
ごめんアレック!!
今回いい仕事してたよ!!
とゆーか、本作で一番心動かされたのは彼の演技だったかもしんないぜ!


何があっても僕は君の見方だよ  


介護もしたい、でも自分の仕事も大切(ジョンは医者です)。
生活していく為には仕事をしなくてはいけない。アリスと一緒に過ごしたいけれど、転勤を断るわけにはいかない。
ジョンの決断にはリアルがあって胸に詰まされます。
実際アリスとジョンは経済的に恵まれた環境にいると思います。それでも厳しい現実が待ち受けている。
病気の事、介護の事、生活の事、いろいろと考えさせられました。


Still Alice
離れたくないけれど現実を見つめたらそうはいかない。  ここ泣けたぁぁ・・・


体の体積も頭の大きさも『レッドオクトーバーを追え!』の頃の3倍強になってるアレックだけどさ!
ほぼジャスミンのバカ夫と同じ頃の撮影なんだろうけどさ!
今回とても素敵なアリスの夫ジョンを好演だわさ!
発病し、どんどん変わってしまうアリスに変わらぬ愛情を注ぐジョン。
二人が出会った頃の思い出を語るシーンでじいぃぃぃぃん。
頭はアリスの2倍ほどデカいけど、こんな優しい旦那がいてくれるアリスは幸せだよ!

さあ!出すよみーすけ色!
頑張れアレック・ボールドウィン!


Still Alice
「アリーー!!」 どすどすどす!!  アリスを追って海岸を走るジョン


Still Alice
「はぁはぁ、あ、足が上がらん・・・心臓が痛い・・・」   

痩せなはれアレック

お粗末様でした・・・。



あの時僕は若かった
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No title

これ、どうコメントしてええのか分からないくらい身近な話。。病気がアルツハイマーであれがんであれ、家族としてどう接していくか、長女も次女も旦那もどれが正しいとか言えない。。
そして現時点で一人身の私が今後起こりえる事にどう対処していけるのかも考えさせられる映画でした。
ぜいぜい。。。健康第一、、、アレック顔のでかさにびびったけど、優しかったね。

Re: No title

め ちゃん

ホントに他人事でないよな。
病気の種類関係無しに自分にも家族にも起こり得る話だけに、終わった後の頭の中の重さったら無かった。
色々考えるスイッチんなる映画だなーという感想。
アレックてばスタイリッシュなハンサム野郎が、人の良さそーな外人のおっさん化しちゃってさ(笑)
頭はでかかったけど優しい愛情深い夫を好演で久々に痺れたー。

No title

ほんと他人事じゃないわぁ。
しかし、リッチで知的な家族だったので、ちと綺麗なお話になっちゃったかなぁと。
もっとドロドロするんじゃないかと思ってた私には(ドラマとしては)少々あっさりに感じたんですが、その分アリスの内面と病気の進行に集中できた気がする。

ジュリアンは素晴らしかったね。
あのスピーチシーンは私も感動でした。

アレックは貫禄付きすぎだよね(笑)

Re: No title

pu-koさん

うん、インテリなお金持ちの夫婦の設定だから、究極の話を回避してるってのあるね。
金銭的な事や家介護も家族が出来なかったり等々、現実はきっともっと厳しいと思う。
でも色々考えるきっかけになる映画だなと思いました。
しかしジュリアンの演技はマジ凄かったねー。オスカーの時一緒にいたリアル旦那がメチャイケテた(笑)
アレックはしばらくテレビの人っぽかったけど、ウディ・アレン作品でちょこちょこ面白い演技してるよね。けなしたけど『ブルー・ジャスミン』のバカ旦那ハマってたもん。
てかMIPの新作にも出るね。
貫禄のラブハンドルのお陰か!!

やっと観たさ~

ご無沙汰で~~い!!m(__)m

先月で子守りが完全終了した私は、母の病院通いと「映画三昧」の日々。
ってもね「ばば、今日も行っていい~?」って可愛い声で誘惑(?)されっと
「ほいほい」って快諾しちゃってさ。この歳でトランプ・折り紙・あやとり・ままごと
は、キツイっすよ><

あ、この映画みたくならんように、こどもと脳の活性化に勤しんでると
アルツ磐梯山、イヤ、アルツハイマーにはならんかいの?もう怪しぃ~?

ジュリアンの細かい演技、確かに「ホンモノ」っぽくって上手かったね!!
自分に置き換えて見てたから怖くなったよ。

一番ママに反発してた次女にパパが「頼んだぞ」と泣きつくシーン、
私も「ウエ~ン」だったゎ。

こんな頼れる家族と夫・・・・理想だな。

そ、そ、「チィルド44」も観たんよ。そこにも感想、行ってみっか!!

Re: やっと観たさ~

chacoさん

おかえりなさい!
待ってました!お家の事とか忙しかったんですね。
でもくれぐれも自分の体調には気をつけて!!

でねー、これは自分に当てはめて怖くなったんですよね。
自分がアリスになったら?家族がアリスになったら?
この映画でちょっと不満だったのが、アリスは夫も子供もいて、お金にも余裕があるかんじでしょ。一般的にはもっと厳しい状態になるんじゃないかなーとかね。
でもジュリアン・ムーアの演技力は凄いね。
てか、そそ!ボールドウィン演じる夫の優しさが胸に染みるわ~💧えー旦那や💧
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Author:みーすけ
いらっしゃいませ
天邪鬼なので映画の好みも多少偏りありです
毒も吐き、妄想も垂れ流しますが笑って許してくださいませ
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