「つぐない 」 それでもわたしは許せない

「つぐない」 (2007)イギリス
原題/Atonement
監督/ジョー・ライト
出演/ジェームズ・マカヴォイ キーラ・ナイトレイ シアーシャ・ローナン
   ヴァネッサ・レッドグレイヴ 他 

つぐない

イアン・マキューアンの「贖罪」の映画化。
ヴォイ先生の出演作の中でも一、二を争うほど好きな作品ですが、観る前に気持ちを整えてからしか観られません。
今回はいつものような軽口を叩けないような気がする・・・。
そんな作品、「つぐない」です。

1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。
兄弟のように育ち、ケンブリッジ大学でも同窓生の 政府官僚の娘セシーリア(キーラ・ナイトレイ)と使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)は、身分の差を超えお互いに愛情を感じるようになっていた。
一方セシーリアの妹、ブライオニー(シアーシャ・ローナン)は小説家を志す想像力豊かな13歳の多感な少女。
彼女も兄のようなロビーに幼い恋心を抱いていた。

        つぐない
S・ローナン この年齢だからこそ出せる透明感が凄い

久々に兄が帰省する事になっている、ある夏の日。
ブライオニーは窓から覗いた庭で 驚く光景を目撃する。
姉のセシーリアがいきなり下着姿になり噴水に飛び込み、ずぶ濡れで出てくる。
彼女を見つめ、立ちすくむロビー。二人の間のただならぬ空気と緊張感。
そしてロビーに対する不信感を抱くブライオニー。 

つぐない
相変わらず ”壁なお胸” のキーラ・・・

つぐない
を、うっとり見つめるロビー  にうっとり♡  二人が自分の気持ちを確信するシーン

噴水での行き違いを謝る手紙を書いたロビーは、自分で渡すのが気恥かしかった為に庭で出会ったブライオニーに託す。
しかし、ちょっとしたイタズラ心でタイプしたもっと直接的な、しかし彼の本心の言葉を綴った方を入れ間違えて渡してしまう。
手紙を盗み読んだブライオニーはその内容の卑猥さにショックを受ける。

つぐない

その夜ブライオニーは図書室で愛し合う二人を偶然目撃してしまう。
大人の睦み事がまだ理解できないブライオニー。
兄のように慕っていたロビーへの気持ちは嫌悪感へと変わった。

そんな折、夕食の席で従兄弟の双子が家出するという総動が起こる。
一同が敷地内で捜索する最中、同じく従姉妹のローラが庭で何者かに強姦される事件が起こり、ブライオニーはその現場を目撃してしまう。
彼女は家族や警察に「犯人はロビーだった」と証言するのだ・・・。


前半、タイプライターのキー音とピアノの旋律に ブライオニーの動悸、若い恋人たちの心の動きが同調して、その緊張感に観ているこちらも心拍数が上がり息が苦しくなる程。
噴水のシーンと図書室のシーン。それぞれの事象をブライオニーの目線、セシーリア、ロビーの目線と双方向から語る演出が面白い。
当事者が変わると同じシーンが全く違った印象と味わいに変わるんです。

つぐない
少女の嘘に人生を狂わされる青年ロビーにJ・マカヴォイ。 誠実な瞳がたまらない♡
ヴォイ先生、こういう好青年から、チャラいプロフェッサーX、病める悲しき男、最近観た極悪な刑事等、めきめきその頭角を表しています。 やっぱ英国産は違うな~。演技の引き出し凄いから。
本作も将来有望な青年が一転無実の罪で投獄されてしまう悲劇を緻密に演じています。


24つぐない
ロビーを信じ愛し続けるセシーリアに「プライドと偏見」に続きライト監督とは2度目のタッグのK・ナイトレー。
グラマラスな女優が苦手なわたしは、やはり(笑)この女優が大好きです。
超美人ではないのですが、意思の強そうな瞳がとても魅力的。


           つぐない
13歳のどこかエキセントリックな少女ブライオニーにS・ローナン。この輝かしい表情!

ロビーへの気持ちはブライオニーの初恋でしょう。
しかし自分は女性としては見てもらえない事への漠然とした苛立ち、嫉妬、彼に対する嫌悪感。
そんなものに対する八つ当たり的に嘘をついたのでしょうか。
それがどんなに大きな問題を引き起こすかまでは、幼く考えが至らなかった。
連行されるロビーを見つめる冷ややかな ブライオニーの視線が怖い。

つぐない
逮捕連行されるロビーを瞬き一つせず見つめるブライオニー  


事件から4年後、ロビーは厳刑を条件に海外派遣軍としてフランスで従軍していた。
敗残兵として逃げ惑う過酷な戦場で、彼の心の拠り所は出征直前に看護婦として働くセシーリアと再会し、お互いの愛情を確かめあった事。
帰還後、海辺のコテージで二人で過ごす夢。
「生きてわたしの元へ戻ってきて」
セシーリアの言葉を胸にダイナモの撤退に参加すべく海へ向かう。

つぐない
戦場でありながら、パンジーの丘がとても美しい
 
つぐない
この通称「ダイナモ作戦」の再現シーン ハンディカムの長回しは必見です。


一方18歳になったブライオニーも大学へは進まず看護婦として働く傍ら、
少女の頃の過ちを文章に起こそうとしていた。
撤退作戦から帰還した負傷兵の介護にあたり、戦場の悲惨さを肌で感じるブライオニー。
その戦場にいるロビーを想い、自分の犯した罪の大きさに思い至る。
そんなある日、従姉妹のローラがあの事件の日に兄の友人として屋敷に来訪していたポール(ベネディクト・カンバーバッチ)と結婚する事をニュース映像で知る。
ブライオニーはあの夜の事件の真相に付いてある確信を持ち、セシーリアに会う決心を固める。

つぐない
成長したブライオニーに、ファスも出ている(笑)オゾン監督「エンジェル」のロモーラ・ガライ

ブライオニーが思い切ってセシーリアに会いに行くと、そこには一時帰国したロビーが居た。
彼女は自分が見た事実を二人に伝えロビーに激しく叱責される。
裁判所や周りの人々に本当のことを話し、彼の冤罪をはらすと約束する。

つぐない
ロビーに一方的に責められるも、ただ謝るだけのブライオニー。 でも実はこれは・・・

時は過ぎ、老人となったブライオニーは作家として成功している。
彼女は自身の21冊目にして最後の作品「つぐない」を発表する為のインタビューに答えている。
病気のために死期を悟り、どうしても伝えなければと少女期に自分が犯した罪を赤裸々に本として発表する。

ここで、最後に発覚する事実に、わたしは驚愕し恐怖さえ感じました。
ブライオニーは生涯を通して 姉と初恋の人の人生を大きく変えた自分の罪と向き合い暮らしてきたのでしょう。
その数十年は辛く重いものだったに違いありません。
罪の告白をする事が唯一彼女のできる精一杯の贖罪だったとしても、毎回わたしはブライオニーを赦す事が出来ないのです。
唯一の救いとしていた事実が虚構だったとしたら、救いは何処にも無いからです。
こんな残酷な話があるのかと悲しさと腹立たしさでいっぱいになります。
叶う事の無かった、姉とロビーの愛し合った時間を小説の中で残したとしても、それは小説家としてのブライオニーの自己満足、自分への癒しに思えてしまうからです。

        つぐない
老年期のブライオニー演じるV・レッドグレイブ  シーン数は少ないながらも彼女のモノローグは圧巻

許されないと分かっていても、責められても、ブライオニーは二人に謝りたかったのでしょうね。
だからこそ せめて小説の中だけでも「無かった事」を「あった事」にしたのでしょう。
あまりにも残酷で悲しい事です。

つぐない

ラストシーン。 白い壁、青い窓枠のコテージが望む海岸は天国のようです。
毎回ここで やりきれない思いで涙が止まらなくなります。
それが虚構だとわかっていながらも、何度も何度もあのシーンを観て、これが事実だったらと願ってしまいます。
セシーリアの幸せな笑顔と ロビーの希望に満ちた瞳。
ブライオニーが願って止まなかった二人の姿を。
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tag : ジェームズ・マカヴォイ

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No title

ロビーとセシーリアの悲恋に泣きました。
ブライオニーの罪は重く、どうしても許せないのだけど
もし戦争がなければ、あるいはブライオニーが罪を告白する時間もあったのかなと
全て叶わなかったことを思うとただただ、虚しいのですけどね。
構成も面白く、残酷だけど美しい。胸打たれる作品でした。

Re: No title

pu-koさん
いたたまれないラストでしたね。
でも何回も観ちゃうんだな~。
V・レッドグレイヴの表情の中に色んな気持ちがこもっていて、あんな短い
シーンなのにさすがの存在感で究極の顔芸かと!

本文では触れてないけど、顎が二重になってるベネのいやらしそうな顔w
ロリ野郎を嫌味たっぷりに演じてたよね~ファンはドン引きだな、きっと。

最後に残るもの

こんにちは。
こちらのブログの存在を偶然知り、みーすけさんの丁寧な文章に映画に対する深い愛情を感じて少しずつ読ませていただいています。ただ、映画そのものを見る前に読んでしまうとストーリーが分かってしまうと思い、こうして古い記事にばかり投稿することになってしまいます。それに、私は若い頃は映画館(名画座)によく見に行ったけれど、今ではもっぱらTVに頼っていますので純粋な映画ファンとはとても言えないのですが、、、
「映画の好みも多少偏りあり」とみーすけさんは書かれていますが、その偏りが私と似ているかな?と感じるところもあり、時々こうしてお邪魔させていただこうかな、と思っています。

「つぐない」私も好きな映画です。基本的にイギリスの映画やドラマが好きで、役者さんもイギリスが一番だと思います。キーラ・ナイトレイ、美人なのに美貌に頼らない演技力がやっぱりイギリスの役者さん、と感じます。
この映画、と言いますかイギリスという国を語る際に欠かせないのが「階級意識」ですよね。この映画も少女の嫉妬心だけならこんなことにならなかったのではと思います。そして人の愛はその壁をも超えて行く。
勿論きれいごとでは済まされないドラマですが、私にとってはそんなことを感じさせてくれた映画でした。

キーラ・ナイトレイと言えば、「わたしを離さないで」がすごく好きな映画で、キャリー・マリガンの存在感が素晴らしく、印象的でした。

Re: 最後に残るもの

からしだねさん

こんにちは!
わたしの偏り映画愛に共感してくださる方がいてくださってうれしー♪
この記事、ブログ開設して直ぐの頃の文章ですねー。
まだがちごちに力入って固くてお恥ずかしい~💧
普段は記事アップ前に最低限の誤字脱字だけcheckしたらちゃっちゃとアップしてあとは読み返しあんまりしないので、改めて読み返すと赤面!!www
とにかく悲しい恋人達が不憫で不憫で身勝手な妹に激おこでした。しかもあの残酷な結末……💧
マカヴォイの透明感溢れる青年ぶりが、もーー可哀想で可愛くてたまりません。
イギリス産万歳!!イギリス方面の役者はいーーですよね!
キーラ、わたしの周りではなぜか評判悪くて。
彼女の演技は非常に自然で大好きです。最近だと『始まりの歌』でのキーラとマーク・ラファロが凄く良かった。ご覧になりました?もしまだでしたら是非!
『わたしを離さないで』は好きすぎて、痛すぎて、思いが重すぎて上手くレビューが書けなくて、書きかけて置いてる作品です。
キャリー・マリガンいいですね!『シェイム』や『ドライヴ』での彼女が大好きです。
偏愛ブログ、また遊びに来て下さいね♪

Some Day

みーすけさん、ご返事ありがとうございます。
『はじまりのうた』は、最近TVで何度か放送されたのですが、見損ねてしまいました。みーすけさんご推薦なら、今度機会があるときに見ようと思います。キーラは「イミテーションゲーム」では知的な学者さんを違和感なく演じていて、意外と引き出しの多い人ですよね。

「わたしを離さないで」、いつかぜひレビューを書いてくださいね。思い入れが深すぎて逆に書けないというお気持ちよく解りますが、みーすけさんがどんなことを感じられたか読ませていただきたいです。
一見突飛な発想のSFになりそうな映画なのに、どうということの無い普段の情景の一つ一つが宝石みたいな輝きを持っている作品ですよね。
映画批評とか疎いのですが、この映画って上映されたころ話題になったのでしょうか。私の心の中ではかなり評価の高い作品のひとつです。

その時を、楽しみにお待ちしています。

Re: Some Day

からしだねさん

キーラは引き出し多いですよね。
ちょっとしゃくれたツンとした表情てわ意地悪に見えると好きになれない派の方印象みたいですけど、かなり気さくで可愛らしい人だろうなーとわましは思うんですけどね。
ま、好みですよね。

キャリー・マリガン大好きで。この女優も引き出し多い。えんぎが深い。
『わたしを~』はちゃんと冷静にレビュー書けるよう頑張りますwww
いっつも書いてて途中てわ冠状が溢れて何を書いてるか分からなくなってしまって。
冷静にあらすじ追うのもそれはそれで違うなって思っちゃうんですよね。
映画は楽しいですねー。

『始まりの歌』是非!
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Author:みーすけ
いらっしゃいませ
天邪鬼なので映画の好みも多少偏りありです
毒も吐き、妄想も垂れ流しますが笑って許してくださいませ
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