「チョコレートドーナツ」 無糖カカオ原液な体の現実

「チョコレートドーナツ」 (2012)アメリカ
原題/Any Day Now
監督/トラヴィス・ファイン
出演/アラン・カミング  ギャレット・ディラハント  アイザック・レイヴァ 他

チョコレート・ドーナツ

1970年代後半のサンフランシスコ。
歌手を夢見ながらドラァグ・クウィーンとしてステージで踊っているルディ(アラン・カミング)は客としてやってきた地方検事局で働くポール(ギャレット・ディラハント)と出会い愛し合うようになる。
二人は母親に置き去りにされたダウン症の少年マルコ(アイザック・レイヴァ)と出会い、三人は実の家族のように暮らし始める。
しかしゲイに対する世間の偏見や法律の壁に阻まれて、ルディとポールは、マルコと引き離されてしまう。

チョコレートドーナツ
綺麗に着飾ってますが、腋の処理をしてないんだなぁ~。 ホントは歌手志望なのよ!って意思表示かなぁ。

チョコレートドーナツ
言葉数は少ないものの、マルコを演じたアイザック君の表情が何とも可愛かった。

チョコレートドーナツ8
凸凹はあるけれど本当の家族のように生活する三人。しかし幸せな生活は長く続いてはくれない。

母親に見捨てられたダウン症の少年と一緒に暮らすため、司法や周囲の偏見と闘うゲイカップルの姿を「17歳のカルテ」のトラヴィス・ファイン監督が実にシビアに描いています。
カンヌでダブル主演男優賞を獲ったダウン症の青年とワーカ・ホリック男のファンタジックなロード・ムービー「八日目」。
なんとなくあの映画をイメージして観たんですが、同じように役者が劇中歌うものの、こちら全く逃げの効かない映画。
オブラートで包むことなく、ありのままの現実を正面から見せつけられてかなり切なく辛かった。
甘い「チョコレート・ドーナツ」どころか、無糖カカオの原液一気飲みな気分でした。


アラン・カミング演じるルディは、歌手を夢見るも叶わず毎日ドラァグ・クィーンとして口パクステージのショーで日銭を稼ぐゲイの中年男。
満たされない毎日を過ごす彼は、ステージを見に来ていた客のポールと意気投合。あっという間に深い関係になりますが、ワンナイトな関係ではない繋がりを感じます。
程無くルディは同じアパートに住むダウン症の少年マルコとも出会います。
マルコの母親はジャンキーで、怪しげな男を自宅に引っ張り混み、息子の世話もろくにしているように見えません。
ゲイというパーソナルなため世間から阻害されているルディは同じように親からかえりみる事をされず育児放棄されているマルコの存在を無視する事が出来ず、検事局で働くポールに相談しに行くんですね。

チョコレートドーナツ
初めて自分の部屋を与えてもらい嬉しくて泣き出すマルコを抱きしめるルディにこちらもウルウル。

ジャンキーの母親が逮捕され、福祉施設に強制的に入れられそうになるマルコを引き取り、ポールの法律家としての手腕を活かして、三人の「家族」としての共同生活が始まります。
時代を反映して、8ミリカメラで映し出される彼らの家族としての日常は温かな雰囲気に溢れ、映画のなかで唯一ホッとできる場面です。

チョコレートドーナツ
養護学校で拙い歌を披露するマルコに感激するパパとパパ。

70年代のアメリカはまだゲイに対する偏見やバッシングが強く、ゲイという事で職場を追われたりしてしまう。
ポールも自らのセクシャリティに関して同僚に隠し仕事を続けるのですが、上司に悟られてしまい・・・。
普段何の気なしにわたし達も個人のパーソナルに関して茶化したりしている事があるんだとハッとさせられました。
悪気は無くてもやはりそれは差別なんだと。悪気がないだけに自分の言動にもっと責任を持たなくてはと思いました。

チョコレートドーナツ

誰に迷惑をかけるわけでもないのに、幸せな三人の生活は法律という高い壁に突如として阻まれます。
杓子定規な血の通わないお役所仕事な人達のために奪われた幸せを必死に守ろうとするポールとルディ。
これが実際に起こったことだと考えると一層胸が痛みます。
マルコのような思いをする子供がいなくなる世の中になって欲しい。道徳の本みたいな偽善ぽいことしか言えないけれど、本当にそう感じたんだからしょうがない。
辛口な現実を突きつけることで、観客に色々な事を考えさせる作品。
シアトル、トライベッカ始め数々の映画祭で「観客賞」を総なめにしているのがその答えなのでしょう。

チョコレートドーナツ

ギャレット・ディラハントって意識した事が無かったのだけど、いい演技してましたね。
裁判で自らの思いを吐露する場面が圧巻。
また、ラストのモノローグで、軽々しく泣いてはいけないと思いながらも嗚咽を抑える事ができませんでした。
辛いなぁ、悲しいより憤りの方が強くて観終わってかなり消耗してしまいました。
鑑賞後に凹んだり、色々と考えてしまう辛い映画でしたが、差別や偏見に関して思いを馳せる機会にもなりました。
自分の言動に関してや、家族の形、愛の形、たくさんの事を考えさせられた映画でした。

チョコレートドーナツ
アラン・カミングの歌が素晴らしい! 「アイ・シャル・ビー・リリースト」には痺れます。

役者陣の演技、なんと言っても主演のルディを演じるアラン・カミングが素晴らしかった。
本当の親のようにマルコを慈しみ、ポールを愛するルディを好演でした。 
始めて彼に注目したのは、スタンリー・キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」でのホテルのクローク係。
自身でバイセクシャルをカミング・アウトしている彼のオネエな演技が面白くて、俄然注目。
監督として作品も撮っていますが、「X-MEN 2」からしばらく映画で観ないなぁと思ってたら、舞台で活躍していたんですね。トニー賞も獲得の彼の歌は本物です! 鳥肌立つほど素敵だったわぁ~。

チョコレートドーナツ
邦題になったチョコレートドーナツはマルコの大好物。 なぜ好物なのか?の原因が悲しいけれど・・・。 

マルコを演じたのはアイザック・レイヴァ。彼の存在感あってこその本作でしょう。
中学の頃から俳優をめざしていたアイザックは、彼の母が設立した障害を持った人々の演劇学校で学び本作のオーディションで見事マルコ役をゲット。本作は映画初出演との事。
人形を抱きしめて廊下に立ち尽くすマルコに泣かされちゃったよ。

チョコレートドーナツ
プレミア会場でのオフショット。 アイザック君の笑顔がいいね~♪

スコットランドのオシャレ番長こと アラン・カミング。
この人あちこちのプレミア会場でのオフショット色々見てますが、本当にオシャレさん。
実は↑ このチェックシャツの下に合わせてるのは膝丈のパンツ。
おぬしやるな・・・なのです。
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チョコレートドーナツ

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No title

これはやるせなくて泣いた、泣いた。
そして、私も普段つい茶化してしまうけど、それも差別というのにハッとしちゃった。
気をつけなくちゃですねぇ。
偏見についても考える機会になりました。
マルコの笑顔もっと見たかった。

Re: No title

pu-koさん

何処までが実話に基づいているのか分からないけど、ポールのモノローグに声が出るほど愕然として涙が止まらなかったなぁ。
色々考えて頭グラグラしちゃう映画でしたよ。
アラン・カミング歌が素敵だった♪

No title

うんうん、と頷きながら読ませてもらいました。
ホントに切ない気持ちでいっぱいになりました。
私も、人形を抱きしめて廊下に立ち尽くす姿や、自分の部屋を見て泣いちゃうマルコに、もう涙が止まりませんでした。
考えさせられる作品でしたよね。
こちらからトラバさせていただきますね~

Re: No title

じゅりさん

家族を構成するために必要なのは「血」ではなく「愛」なんだなぁと感じました。
お涙頂戴に走りすぎない淡々としたエンディングが却って心に突き刺さってやるせなさ炸裂でしたね(T_T)

TBありがとーございます♪
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